Written by 山本 祐平January 22,2016
皆様、ご無沙汰しておりました。
フィルム・ノワールシリーズ第3回目は、前回登場したジャン・ポール・ベルモンドは主演したフレンチ・ノワール作品でも、クールな中に少しフランクでチャーミングな人物像が多い中、今回登場するのは人気を二分したベルモンドとは正反対の陰りの魅力を持つのアラン・ドロンの登場です。
多数あるアラン・ドロンのフレンチ・ノワール作品の中、決定的に、のちの彼のスタイルとなった代表作( Le Samurai ) サムライ(邦題)をご紹介致します。
人気を二分した同世代のベルモンドが赤く燃える炎なら、ドロンは冷たく燃える青い炎とも言いますでしょうか、、この作品の中のドロンはジャン・ピエール・メルヴィル監督の極限まで抑えの効いた控え目な演出と、ドロンの若く美しき容姿も手伝ってか、両者の感性がうまくブレンドし、より一層、悪魔的魅力を持ってスクリーンに登場します。

この作品でジャン・ピエール・メルヴィル監督(写真右)との出逢いがアラン・ドロン生涯のスタイルを決定ずけたと言っても過言ではないと私は思います。
この映画を通じて、ある周波数と引き算の美学をメルヴィル監督から学んだのではないでしょうか。
何度も言いますが、彼らは表現や演技にしろ 表情にしても 細かな所作を饒舌にせず、極限まで控え目にすることで自身のパーソナリティーがよりいっそう浮かび上がる事を熟知していたに違いないと思います。
私も若い頃から幾度となく観たメルヴィル作品を通じて長年の仕立て屋稼業の基本的考えになってます。
この美学は私にとってもすごく共感できる世界であります。
例えば、プレスの効いたチャコール・グレーのオーソドックスな背広に丹精な衿の調子の白いシャツ、襟元にはなんとなく結んだ黒のニットタイ。
控えると言う表現。
昔も、今も、これからも、佳き時代の映画やフレンチ・ノワールやから学んだことです。

トレンチコートにソフト・ハットと言う使い古されたハードボイルド的演出も丹精なドロンの悪魔的魅力がスタイリッシュにさえ映ります。
これは、フランスのエスプリとでも言いましょうか、このクールな世界はメルヴィルとドロンだけのマジックだと思います。

この日本版のポスターがトラウマになっている方々、多いんじゃないですか?

まるでおまじないでもしているかのように繰り返し出てくるこの1シーン
私もソフト被る時、ついこの所作をしてしまいます。(笑)

サムライ、また観たくなってきました!
写真は引用です。
Written by 山本 祐平August 09,2014
フィルム・ノワールシリーズ第2回目はフレンチ・ノワールの王道と呼ぶに相応しい、若き日のジャン・ポール・ベルモンド主演の「いぬ(Le Doulos)」"1962"です。メルヴィル作品中最も複雑なストーリー構成を持つ作品で、誰しも一度ではストーリをつかめずエンディングをむかえ、見終わった後は喉に小骨が刺さったまま腑に落ちない気分で話は終わります。しかし、喉に刺さった小骨が気になり幾度となく繰り返して観ると、主線と複線がうまく絡み合い。メルヴィル流の"抑えが効いた"演出をもって浮かび上がる孤高のストイシズムの世界。全編モノクロームの映像も手伝ってか、若き日のベルモンドがどことなく近寄りがたい鋭さをもち、悪魔的なムードをより一層深める演出。ここでもお決まりのダークスーツに中折れのフエルト帽にトレンチコートスタイル、ここでステレオタイプのダンディズム風にありがちなオーバーな演出は必要無く、"言葉少なく乾ききった世界がそこにはある。
"じつにしびれます"!!
ベルモンドのトレンチコートの着さばきに注目。
幾度となく雨風に打たれたよれよれの軍用タイプのトレンチコートをここでは、欧州人らしく(身だしなみを重んじる) きっちり打ち合わせをかさね、ベルトは無造作に結ぶのでは無く,少しきつめにバックルに通す。ここにできた腰から裾にかけてのラインがなんとも"イナセ"で若年の引き締まった身体がより一層強調され、タフで強靭なムードさえ感じさせる。
これは若年のベルモンドにしかできない見事な着こなしである。


写真は引用です。
続く
Written by 山本 祐平March 10,2014
フィルム・ノワール!なんてストイシズムを感じさせる響きでしょう。
一般的にフィルム・ノワール(暗黒映画)と称するジャンルには、ギャング映画、探偵映画、スパイ映画、脱獄映画などいろいろありますが、そもそもフィルム・ノワールとは、社会から自身を孤立させ、己のルール(掟)に従って生きる事を選んだ者の、やるせないほどストイックな世界を描いた映画のみに与えられる呼び名である。
今回は、その中でも私が敬愛して止まないフランスのノワール役者達を順番に紹介していきます。
皆様は、フランス映画史上最高のフィルム・ノワール作家と呼ばれた、ジャン・ピエール・メルヴィルをご存じであろうか。特に彼の作品の中でも1950年代~60年代にかけての作品には、これぞフレンチ・ノワールと呼びたい作品がいくつかあります。
写真下 メルヴィル氏、
いつもダークスーツに黒っぽい地味なタイ、アモール型のサングラスにテンガロン・タイプのシャポーがトレードマーク。私はこれぞ、男の最終解脱な装いと思っております。(笑)

メルヴィル作品のファーストバッターはリノ・ヴァンチュラの「ギャング(邦題)」「Le Deuxiem Souffle」 '66から、
役者をやる前は格闘家として馴らした事でも有名。強靭な肉体と深い眼差し、寡黙な口元、男らしい容姿も手伝ってか、フランス版任侠映画のムードがぴったりで一味も二味も違った演技を魅せてくれました。
こう言う、粋も甘いも噛みしめた深みのある役者やワケ知りの渋い男が世の中からいなくなりましたね。

メルヴィル演出に欠かせないトレンチ・コート。
ヴァンチュラ流のトレンチ・コートのファンクショナブルな機能をうまく活かし暗黒街の男を演じる着こなしは流石です。
私も長年トレンチ・コートは愛用してますが、、この作品でのリノ・ヴァンチュラの佇まいが、一つの原風景となっています。
渋いの一言です!

続く
写真は引用です。