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「3.0」時代にビジネススーツは何色になっているのか

Written by 中野 香織March 01,2017

みなさま、こんにちは。3月に入りました。就職説明会が本格的に始まり、黒いリクルートスーツ軍団を目にする季節でもあります。

毎年、あちこちで書いたり話したりしていることですが、これは21世紀に入って生まれた、日本独自の光景です。マニュアルに従いたい大学生。作りやすく売りやすいものをわかりやすく販売したい量販店。両者の思惑がみごとに合致して生まれた、特異な流行です。

それでも就活時だけの現象かと思っていたら、そうではないのですね。

NewsPicksの編集長でもあられる佐々木紀彦さん著『日本3.0』(幻冬舎)という本のなかに、驚きの服装指南がありました。


念のためお断りしておきますが、この本じたいは、とても真摯な思いから書かれている良い本なのです。明治維新から敗戦までの「日本1.0」、敗戦から現在までの「日本2.0」に続く、これからの「3.0」時代を生き抜くための現状総整理と未来への提言。なによりも、世界で闘っていくためには「教養」が必要と説き、後半はかなりその点が強調されているところに、頼もしさを感じます。

引っ掛かりを感じたのは、外見の大切さを説く箇所なのです。ほんの少しですが服装指南もなされています。そのなかにこんな記述がありました。

「『プレゼンのときは、黒いスーツを着る』など基本作法をおさえているかどうかで、相手への説得力が変わってきます」。(『』内は黒字で強調されています)

今の日本ではそういうことになっているのですか?? ビジネスのプレゼンの現場を見る機会も少ないので、「黒いスーツが基本作法」という言い切りにひるんだのですが。

百歩譲って、日本ではそうなっているということを受け容れましょう。でもこれは「グローバルに闘えるビジネスマン」としての心得を、おもに30代の方に向けて説いている本。とすれば、世界のビジネスの現場では黒は避け、ネイヴィーかダークグレーを着る、というのが一応のスタンダードになっていることくらいは、書き添えていただきたかったところです。

職種においても若干、異なりますが、現在のグローバル基準においては、黒は喪服、フォーマルなパーティー、あるいはトップモードとして着られる色で、ビジネスでは好まれません。

もちろん、法律があるわけでもないし、日本ではこれが主流だから黒でいいんだ、と通すならば、それもいずれはスタイルとして認められていく可能性もなきにしもあらず。(スティーブ・ジョブズのように、そもそもスーツを着ないということだって、貫き通せば「スタイル」になりえます。)

しかし、そこまでのスタイルを確立していない30代の方は、もし世界で闘おうとするのであれば、やはり現在のグローバル基準を、それこそ「教養」として押さえておくことをお勧めします。そのうえで、自分は何を着るのかを戦略的に考えることができればいいですね。(グローバル基準を知ったうえで、あえて日本流の黒で通すのも、結果をすべて引き受けるという覚悟の上であれば、よいと思います。)

銀座の老舗、高橋洋服店の高橋純さんの著。『「黒」は日本の常識、世界の非常識』。

フィクションとはいえ、やはり現在のビジネスマンの服装の参考にもなる、絶大な人気のアメリカのドラマ「スーツ」。弁護士事務所に勤務する主役の2人は、昼間のビジネスにおいては常にネイヴィーかダークグレーを着ています。

suits drama.jpgそもそも日本におけるビジネススーツの「基本作法」において「プレゼンには黒」ということになっているのだとしたら、就活生がそれにならうのも仕方がないことですね。

無理強いはしません。黒を一着もっていれば、冠婚葬祭にも使えるし、何よりも今の日本においては「みんな一緒」なので悪目立ちしないでいられる、という言い分も理解できるのです。それでもなお、世界で闘おうという志を掲げるビジネスマン、そして世界での活躍を視野に入れる就活生には、少しの勇気を発揮して、狭い視野の中の右ならえではなく、意志ある選択をしていただきたいと思っています。

就活生のみなさまのご健闘を、心より応援しています。

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中野 香織

エッセイスト/服飾史家/
明治大学特任教授

吉田 秀夫

”盆栽自転車” 代表

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"BOOT BLACK JAPAN" 代表

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”テーラーCAID” 代表

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”FAIRFAX” TRAD部門ディレクター

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