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儚きものを、硬い貴金属で作り上げる / 「ヴァンクリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸」展 その2

Written by 中野 香織July 30,2017

すっかり時間が空いてしまい、恐縮のかぎりですが、ヴァンクリーフ&アーペル展の話、その2です。CEOのニコラ・ボス氏と、建築家の藤本壮介さんの興味深いレクチャーから。

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ニコラさん(右)によれば、今回は「魔法の雰囲気」をもつ展示会を目指しました。

展示会場の写真撮影が禁じられていたので想像していただくしかないのですが、今回のハイライトの一つに、18mに及ぶ板を使った展示がありました。5分割してエレベーターに載せたそうですが、この板でイメージされていたのは、すし屋のカウンター。その板の周囲を観覧者はぐるりと回り、表も裏もじっくりと観ることができるわけです。ジュエリーの「裏も見せます」という展示は、そういえば、なかなかありません。完璧な裏を見せられて、私たちは納得するわけです、ハイジュエリーというのは見えないところに手を抜くということを一切していない、どこから見ても極められた製品であることを。


6.3.9.JPG会場で唯一、撮影可能だった場所。ジュエリーのデザインがが大きく描かれていました。

vancleef 2.JPGヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーのモチーフには、自然からインスピレーションを得たもの、バレリーナの瞬間のポーズなど、軽くて、儚くて、消えてしまいそうなものが圧倒的に多いのです。このように儚いイメージを、硬く丈夫な貴金属で作る、その結果、永遠に残るものになる。なるほど、ジュエリーが贈られる時という場面を想像してみると、儚いかもしれない感情を、永遠に「形」に残しておこうとする強い意志が感じられることが多いですね。儚き詩情を硬くとどめる。ここにまさにエモーショナルなジュエリーの醍醐味があるのですね。

vancleef 1.JPG日本の匠の技をきわめた逸品と、フランスの贅をつくしたハイジュエリーが並置された部屋も見ごたえがあります。藤本さんの演出により、どこまでも奥行きが続いていくように見えるのです。これぞマジカル。

究極のジュエリーをこのうえなく美しく見せる藤本さんの演出もまた「匠の技」であったわけですが、この建築家のお話もインスピレーションの宝庫でした。なにか選択をするときには、常に、なぜこれを選ぶのかを説明できるように努めているとのこと。その積み重ねが人やブランドのアイデンティティとなっていくわけですね。

vancleef 3.jpg(講演終了後、ヴァンクリーフの本に、ニコラさんのサインをいただきました)


新しい技術は伝統技術を損ねるものではなく、新しい技術と伝統は補完し合う、という考え方にも共感しました。この展示会もいよいよ8月6日まで、あと1週間で終わります。まだの方は、またとないチャンスですので、ぜひお出かけになってみてください。

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中野 香織

エッセイスト/服飾史家/
明治大学特任教授

吉田 秀夫

”盆栽自転車” 代表

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”FAIRFAX” TRAD部門ディレクター

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”FAIRFAX” 代表取締役

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